だけ
自分だけ、を、人は求めているのです。
自分だけが持ってるもの、自分だけに注がれるもの、自分だけができること、そんなものどこにもないのに、それでもそれを死にものぐるいで探しながらわたしたちは生きてる。
自分の他に代替品がない、って状態、ぞくぞくするほど気持ちいいし、なんなら絶頂しちゃうし。
何でもいいから欲しいよね、そういうの。わたしだけに注がれる愛、わたしだけの才能、わたしだけがいちばん強い想い、そういうこと。ほら、みんなそうでしょう。
それがどんなに魅力的でも強い意思でも、結局代わりのものなんていくらでも見つかるし、その時はなくとも作れちゃうのが人間だけど。それでも今この瞬間、“わたしだけ”がないと、この世界はわたしには重すぎて潰れてしまうのだ。
もういいや。黙って一緒にリップヴァンウィンクルの花嫁を観よう。映画だけはずっとずっとわたしたちの味方。