おいしいおだんご

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帰れバカ

地元が嫌いだ。いやほんとは嫌いではないし地元の友達に会うのも好きなんだけど、たぶんわたしは地元の土地そのものが嫌いなんじゃなくてわたしの子供時代がどうしようもないコンプレックスで、その数々の記憶の断片を否応なく思い起こさせる地元の風景やその雰囲気が嫌なのだろうと思う。だから地元が嫌いだ。もっと言えば地元大好きな人が嫌いだ。妬ましくてしょうがない。

思い返してみると小学校から中学校にかけて楽しかったことなんて本当にひとつもなくて、その頃から自意識をぶくぶく肥大させていたわたしはろくな友達を作ることもなく環境が悪い周りの人間が悪いとわたし以外の全てを憎み妬みながら育ってきた。"フクザツな家庭事情"とかそんなものは結局言い訳で、ほんとうに根っから性根がどうしようもなく捻くれていたわたしは自分だけが成熟してますみたいな顔でとにかく全ての人を馬鹿にして生きていた。卒業式はアルバムの最後のページにメッセージを書き合ったりいつまでも飽きずに写真を撮りあったり近くのフジグランまでプリクラを撮りに向かったりする同級生達をちょっとチラチラ見ながら一応片手で数えるほどはいた友達に一言二言挨拶をして普通にチャリで帰った。卒業アルバムはそれから一度も開いてない。

今この歳になって考えるとそれがほんとうにイタいこともわかるしめちゃくちゃもったいないしマジでダサいと思うけど、過去は変えられないしそうやって形成された捻くれ精神もなかなか矯正できるものではない。今年の成人式は誰への言い訳なのか全然行かなくていいかな〜と思ってたんだけどまあ一応ね〜なんて言いながらバッチリ化粧してバッチリ赤い振袖を着て行った。あの頃うまく接することができなかった同級生のみんながハタチになった今いきなり好意的に話しかけてくれて仲良くなってウチら気合うじゃん?みたいな感じになる妄想は新幹線の荷物棚に置き忘れ、5年前の卒業式と同じように顔を寄せ合ってスマホのカメラを見つめる同級生たちをチラチラ見ながら式が終わった後10分で帰宅した。もちろん同窓会には行かなかった。

地元から大阪に戻ってくると同じく地元から戻ってきた恋人から成人式がいかに楽しかったかという話を聞かされて、よかったねえと言いながら恋人が眠ったあと少しだけ泣いた。本当はもっと楽しく賑やかな学生時代を送りたかったし5年で垢抜けた同級生たちとはしゃぎながら写真を撮りたかった、そういう一般的な交友関係に対する憧れと羨ましさからすっきり抜け出して成人式に行かないという選択をすることすらできなくて、ぜんぶ中途半端な自分が本当にダサくて情けなくて死んでしまいたかった。

地元コンプレックスを持っているわたしは地元に戻って就職するだなんて選択肢は最初からなくて、なんとなくこのままの生活が続くような気がしていたのだけど当たり前にそんなことはないようだ。てっきり院進するのかと思っていた恋人は地元で学部就職しようかなと言い出すし、大学で唯一仲がいい友人も地元に戻るつもりらしい。捻くれて捻くれて捻くれて戻るべきところからみずから逃げてきたわたしを置いてみんなどこかへ帰っていく。わたしはいつまで経ってもふわふわふわふわ浮いたまま、ずっと周りを羨みながら生きていく。ダッサ。