おいしいおだんご

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彼氏が煙草を吸っていた

と、いうことをつい数十分前に聞いて、わたしはなんだかもうどうしようもなくなって、涙が出そうになってしまった。

 

彼の好きなものは、インディーズバンド、洋服、写真、お酒、で、わたしは彼の、好きなことを好きなようにしている姿が好きなのだけど、彼が好きなもの・こと・趣味その他を増やして楽しむぶんだけ、わたしの彼を好き度は高まっていって、わたしの好きなもの=彼になってしまう。

彼がわたしの何を好きでわたしのことをどう思っているのかは知らないけど、彼に好きなものが増えるたびに、わたしという存在もそのうちの一つにすぎないのだろうなという気持ちが強くなる。ずるいなあ、わたしだってわたしだけで楽しく生きられるはずなのに。ほんとうはきみより全然すてきなはずなのに。

 

もともとわたしはわたしのことが大好きで大好きで大好きなので、他のものや人を好きになる余裕なんてほとんどなくて、どんどん色んなものを好きになるみなさんはすごいなあと思っていたのだけど、いざ誰かを好きになってみると、やっぱりそれ以外のものにまで手を広げる余裕がなくて困っている。わたしはわたしだけに夢中にならないきみだけに夢中になってるけど、きみはどうなのかな。きみがきみだけに夢中になっているわたしが好きなんだとしたら、きみ以外に夢中になれるものができたとききみはわたしを嫌いになるかな。

 

ついさっき、2回めのセックスを終えたあと、煙草を吸っていいかと彼に聞かれた。吸ったことがあるということは聞いていたけど、継続的に吸っているということは知らなかった。灰皿がわりのアルミホイルを受け取った彼は、ごめん、隠してた、と言いながらベランダに座った。「嫌かなと思って」

長時間一緒にいるという点から考えて、彼氏が煙草を吸うのがプラス評価かマイナス評価かと問われるとマイナス評価ではあるけれど、煙草を吸うことじたいは良いとも悪いとも思わないし、何よりわたしは好きなことを好きなようにしている彼が好きだということを、まったくわかっていない彼がどうしようもなく悲しかった。煙草くらいなんだ。わたしからの評価なんて気にしないでよ。つまんないきみにならないでよ。

 

とにかくわたしはもうほんとうに悲しくて、寝息を立てる彼を横目にベランダに座って泣きながらこれを書いている。風邪をひいてるし、彼とのセックスでまだ一度もイったことないし、生理が来て下腹部が痛いし、こうやってきみのことばかり考えるようなわたしは嫌だし、夜風がちょっと冷たいし、金木犀の香りがするし(きみのいちばん好きな香りだし)、ほんとうに悲しい。わたしはいま世界一悲しい。

 

この夏一緒に19歳になったきみとわたしの関係を、わたしはまだうまく消化しきれないままで、たぶん消化しきったときに、この関係は終わってしまうのだろうけど、とりあえずしばらくはこのままベランダで、満ち満ちた金木犀の香りの隙間からきみが吸った煙草の匂いを探すことにする。きみの煙草の副流煙はきみへの想いとともにわたしの肺を満たすけど、きみの肺にはわたしは侵食しない。

明日風邪が悪化していたらきみのせいにするけど、それくらい許してよね。